◆灘中学校・灘高等学校インタビュー 第1回
inter-edu's eye
関西のみならず、今や日本を代表する進学校、灘中学・高等学校。東京大学への合格者数は常にトップクラスを誇るが、その裏側には、私学ならではの建学の精神や人間形成の教育がベースにあった。平成19年に併設型中学校・高等学校として届け出て、名実ともに中高6年完全一貫教育を行っている。さらに新校舎も完成する予定だ。時代を読み取り、ますます進化を遂げていく同校の魅力に迫った。
【第1回】「精力善用」「自他共栄」
生徒同士、先生と生徒同士の切磋琢磨が自身の成長に
インターエデュ(以下、エデュ):関西でも、公立志向が増えていきていると思いますが、私学の魅力について教えてください。
和田校長:私学は、それぞれの学校で、建学の精神なり、育てる人間像なり、特色があります。その「特色があること」というのが私学の魅力につながっているのではないでしょうか。
本校でも嘉納治五郎先生の「精力善用」「自他共栄」をなくして、本校は成り立ちません。このような特色を私学はしっかりと打ち出せていると思います。
だから保護者の方は、各学校のアピールをしっかりと見極めていただき、ご子息、ご令嬢に合う学校を選んでいただきたいと思いますし、それが保護者の責任であると思います。
エデュ:ここ数年で、私学を取り巻く環境も変化したと思いますが、今後のどのような学校を目指していきたいと考えていますか?
和田校長:本校の生徒は、それぞれ個性豊かです。その個性のほとんどは、伸びしろを持っています。個性を伸ばせる環境を学校でどう用意するべきかがまず大事です。
そして、個性というのは、伸びていくとほかの個性とぶつかり合う部分が出てきます。そうなったときに、ほかの個性も尊重しつつ、自分の個性を伸ばす環境が整っているか。われわれは、こうした環境を提供し続けなくてはいけないと思っています。
エデュ:個性を伸ばすための新しい取り組みはありますか?
和田校長:具体的なものがあるわけではないですが、常日ごろから取り組んでいることは、生徒の自主性が育つ環境作りです。
「右向け右」で指導するのは、ある意味で易しく、指導しやすい部分があります。しかし、本校の場合は、本校生らしくという枠の中ではありますが、「自由」にそれぞれの方向に向かうことができる環境を大事にしています。
「自由・自主性を重んじる」ということは、教員の自主性も重んじなければなりません。教員が自分のやりやすい教え方、自分に一番向いている教え方を実践しているというのも本校の特長の一つです。
各教科内での取り決めはありません。むしろ、ほかの先生がやっていないことを見つけてきて実践をし、生徒を伸ばしているほどです。これも先生のモチベーションにつながっていますね。
たとえば、英語でも文法を中心に教えていく先生と音声から入って教える先生がいます。最終的には、同じ地点に行きつくのかもしれませんが、そこまでの指導方法は先生の裁量です。教材をそれぞれ選んで、工夫しながら授業を行っています。
そういった意味では、独自色を出せるやりがいのある学校であると思います。私自身も授業を担当していたころ感じていましたから。
ただ、当然のことですが、生徒がいます。生徒との折り合いをつけずに指導していてはうまくいくはずがありません。生徒の反応を見ながら指導することが重要です。最近、話題になっている100歳の橋本先生は、教科書に頼らず『銀の匙』を3年間かけて読むというスローリーディング授業を実践していました。こういった事を実践している先生は、生徒と一緒に先生も成長していると言えると思います。
『自他共栄』と言うのは、生徒同士の切磋琢磨だけではなくて、先生と生徒の切磋琢磨を意味しているのだと思います。われわれ教職員は、生徒に教えられることが多いです。それを素直に受け止めて、次につなげる事ができれば先生自身も成長できる。そういうことができている学校です。
⇒第2回「受け継がれる良き伝統 卒業後も継続する先生と生徒の強いつながり」
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